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AUTOMOBILE COUNCIL 2017 見聞記

8月4日から6日まで、幕張メッセにてAUTOMOBILE COUNCIL 2017が開催されました。印象に残ったブースなどをレポートします。

オートモビルカウンシルは昨2016年以来、2回目の開催。参加するメーカーやショップ、クラブは多く、展示車両も興味ぶかいクルマが集結。会場ではいろいろな人に会えるということなどもあって、クラシックカーに関心がある人にとっては欠かせないイベントになりつつある印象です。
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今年はアウディ ジャパンが初参加。ブースには新しいRS5クーペの発表に合わせて、クーペボディの高性能クアトロモデルのルーツというべき、1980年代の"クアトロ"各車が展示されていました。赤いクルマがショートホイールベースのスポーツクアトロ、その右がWRC用に仕立てたスポーツクアトロS1。S1はドイツ本国から持ってきたものです。さらに右の奥に白いオリジナルのクアトロも見えています。"クアトロ"は、1980年代に世界で初めてオンロード向けスポーツ4WDとして誕生した際には、車名として使われていました。
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マツダは昨年に続いて力の入った展示でした。これはファミリア・プレスト・ロータリクーペ。1台は愛好家の手でレース仕様に仕立てられてスパ・フランコルシャンのヒストリックカーレースに出場したクルマです。
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こちらは、かつてロータリーエンジンを開発したときの実際のパーツ。開発者を苦しめた有名な「悪魔の爪痕」がハウジング内に残っており、実際に手でさわれる展示でした。今年はロータリー誕生50周年になります。
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こちらはトヨタ。昨年はカローラ誕生50周年でしたが、今年はプリウス誕生20周年で、ハイブリッドの歴史に沿って展示されていました。手前は惜しくも、今年またもやルマンで優勝を逃してしまったTS050、いうまでもなくハイブリッドのレーシングカーです。ここ1〜2年、プラグインでない"ただの"ハイブリッドは、エコカーの優遇政策の中では世界的にやや干されている状況があり、とくに今年は電動へのシフトを加速などという言葉をよく聞きますが、「電動」というのは、当面は引き続き大半がハイブリッドというのが現実的であって、世界はハイブリッドから逃れることはできないだろうと思います。
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トヨタのブースは裏手に回ると、歴代プリウスのハイブリッドの動力装置やバッテリーがずらりと並んでおり、さらにかつて試作されたトヨタ800のガスタービン・ハイブリッド車の動力装置まで展示されていました。壁面にはこのように「自動車の動力源の変遷」というような壮大なテーマで、パネル解説もありました。さすがにトヨタ博物館を擁するメーカーだけあり、しっかりした内容の展示で、ひとことでいえば勉強になる内容です。
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こちらはボルボのブース。ボルボは創業90周年です。ボルボ・カー・ジャパンでは、昨年古いボルボ車をレストアするクラシック・ガレージの立ち上げをここでアナウンスしましたが、メインブースの隣にはクラシック・ガレージで扱う過去のボルボ車が数台値札付きで置かれていました。一番手前は、1985年デビューの780。スマートなクーペボディですが、ベルトーネがデザインしたもので、当時のボルボらしい四角四面なボディでありながらイタリアらしく端正なクーペのプロポーションを与えられて、独特な存在感があります。これは128万円のプライスが付いていましたが、ちょっとした名車の資質があるようなクルマとしては、ずいぶんお値打ち価格だと思った次第。
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ホテルのザ・ペニンシュラ東京のブース。初出展ですが、展示されていたのは1934年製ロールス・ロイス・ファントムII。ホテルで実際にウェディング用などで利用されているようですが、これと同じクルマを各国のザ・ペニンシュラで複数所有しているようです。そもそもはグループの会長がクルマ好きなのだそうです。東京も含めて各国のザ・ペニンシュラでは、超高級車での送迎があることが売りになっていますが、ザ・ペニンシュラ東京では、10月に開催されるクラシックカーイベント、ラリーニッポンの冠スポンサーになるなど、クラシックカーの世界に関わりを強めているようです。
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これは、1970年代でしょうか、シルバーシャドウIIがずらりと並ぶザ・ペニンシュラ香港の光景。ロールス・ロイスの広報写真で、ザ・ペニンシュラとロールス・ロイスはこの頃から協力関係を続けているそうです。最新型のファントムがエントランス前にずらりと並ぶ写真もよく目にしますが、ロールス・ロイスがザ・ペニンシュラのいわばひとつの顔になっています。
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これはPodium CarLife Conciergeのブース、オートバックス代官山店でおなじみのカーライフ関連グッズの販売店です。展示されているクルマは1950年型のスチュードベーカー。レーモンド・ロウイのデザインで、知る人ぞ知るクルマですが、実物は初めて見ました。オートバックス代官山店は、このクルマも含めて、ヒストリックカーが展示されることもあり、自動車趣味の世界に力を入れています。
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これはアトランティックカーズのブース。1960年代頃のアストン・マーティンが並びます。美しくレストアされたボディが印象的ですが、このえもいわれぬ気品は英国車ならではというところ。
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こちらはエムズバンテックの展示。競技仕様に仕立てられたフェラーリ308と、DTM仕様のメルセデス190E2.5-16(エボリューション2)が並んでおり、熱いストイックなクルマたちでした。
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こちらはシトロエン専門店アウトニーズの展示。DSを筆頭にエキゾチックなシトロエン各車が長大なスペースにずらりと並んで壮観でした。年代の違うDSが5台も並んでおり、年代やモデルによる細部の違いがよくわかり、興味はつきませんでした。
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主催者による展示のシボレー・コーヴェア。コーヴェアは、操縦製に難易度のあるリアエンジン車と悪名高いスウィングアクスルのリアサスペンションのために、当時弁護士ラルフ・ネーダーに告発されたのが有名で、販売成績は遅れて登場したマスタングのようには伸びず、残っているクルマはあまり多くないようです。このクルマはコーヴェア・モンザの1963年型ということですが、スポーティーバージョンに相当し、コンパクトなスペシャルティーカーの先駆けとなったモデルです。完璧にレストアされた貴重な車両で、やや現実感はありませんでしたが、世界中のクルマに影響を与えたといわれるそのデザインを堪能できました。まるで美術館の展示のようでした。
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(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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