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ルノー・ルーテシアR.S.(シャシーカップ)に試乗

先頃2017年7月にマイナーチェンジを受けたルノー・ルーテシア・ルノー・スポールに試乗しました。足回りの仕様はシャシーカップです。

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マイナーチェンジで外観は、ライトまわりに変更を受けています。内装も細部が変更されています。
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ランプ類はすべてLED。バンパー下のコーナリングランプなどのランプは、チェッカーフラッグを連想させるデザインで、いかにも"スポーツ"しています。
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ルーテシアR.S.は、登場以来リファインを重ねているようです。今回のマイナーチェンジで、一時日本市場から消えていたシャシーカップが復活。試乗したのはその「シャシーカップ」です。ルーテシアR.S.は、これで3仕様が揃いました。「シャシースポール」は最も足回りがソフト、「シャシーカップ」はより硬く、サーキット走行も視野に入れた仕立て。さらにそのうえがもっと硬派な「トロフィー」です。
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「スポール」は以前にもレポートしていますが、比較的ロールを許す足回りで、一般道を走るのが主体なら「スポール」がよさそうでした。ところがその後R.S.各モデルはリファインを受けたようで、2015年夏に長距離試乗したR.S.は「カップ」でしたが、試乗車を返却するまで「スポール」だと思い込んだほどで、硬さが目立たない印象でした。
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今回は「スポール」は試乗していませんが、284万円と、従来よりも価格を下げて敷居が低くなったようで、GTラインのような感覚で乗ってもよい車種といえるのかもしれません。ちなみに「カップ」が309万円、「トロフィー」が329万円です。
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さて今回乗った「カップ」ですが、2015年に乗ったときと印象は変わらず、やはり十分に乗り味は洗練されていて、普段使いでも苦にならない感じです。ただし、舗装がかなり荒れたような路面をごく低速で走ると、ボディにダイレクトに路面の凹凸が伝わって揺れ、やはり相当足は締め上げられているというのがわかります。それでも、シートのクッションが優れており、体にはあまり振動が伝わりません。このシートは秀逸です。
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シートはいわゆる本格的バケットシートではないにもかかわらず、サイドのサポートが優れており、横Gをかけても上体が安定しています。今回ぎっくり腰をした直後の状態で、おそるおそるの試乗でしたが、腰の支えが完璧というような感じで、ほぼ腰痛を忘れて右へ左へと横Gをかけて走ることができました。
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これは、2015年に試乗したときの車両のシートで、若干意匠は異なります。
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これはその2015年時の外観。今回のマイナーチェンジで、ランプ類が変更されているのがわかります。車体に大きな変更はありません。
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2015年の長距離試乗では、以前の試乗で感じていたとおり、安心して思うとおりに走らせられるという感触を得ました。車体の大きさも、パワーも、日本の道で引き出して楽しむにはこれくらいが上限かなという認識です。そのうえシャシーの仕立てが非常にしっかりしているので、躊躇なくコーナーにも入っていけます。ちなみに最大出力200ps、最大トルク24.5kgm、車重1290kg、全長4105mmです。
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長距離試乗のときは、6速EDC(いわゆるDCT)をマニュアルモードにして、積極的にシフトをして走りましたが、今回は短い試乗だったので、終始ATモードで走りました。3ペダルのMTに慣れた身では、積極的な走りでは少し慣れないとシフト操作を誤りがちだからです(※)。しかし、このATモードは、ワインディングをよいペースで走ってみても、シフトアップはもちろん、シフトダウンもリズムよくこなしてくれて、まったくストレスがありません。本当にタイムアタックのような攻め方ではどうかわかりませんが、これなら機械まかせで十分走れるという印象でした。ルノー・ジャポンのスタッフの話では、トランスミッションも登場以来進化しているとのことでした。
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そのほか、上級の現行メガーヌR.S.よりも、設計が新しいぶん、全体に洗練度が増しているようです。電動パワーステアリングの感触も、より洗練されています。
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現行型のルーテシアR.S.は、ノーマルモデルとボディ幅が同じで、とくにトレッドが広いというような印象はありません。今回乗ったシャシーカップでも、意外にコーナーではロールする感じがあり、これはFWDの小型ハッチバックでは致し方ないことで、地面に張り付いたように曲がる感覚を味わうには、やはり専用のスポーツカーボディが必要です。とはいえ、そういうことを望まなければ、これ以上に走りにストイックな気持ちになれるクルマはほかにそうはなさそうです。
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(※ ルノー・スポールのパドルシフトはステアリングのコラム側にパドルが付くので、ステアリングをいそがしく回す場面でも操作しやすいですが、より確実にはやはりフロアのシフトレバーを前/後にシフトアップ/ダウンするのがよいと感じています。ただしそれが、慣れないと、どちらがアップ/ダウンなのかいそがしく操作しているとわからなくなるわけです。どの2ペダル車に乗るときも同じです)
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今回、待ち時間にメガーヌR.S.にも試乗できました。メガーヌとなると、やはり手ごわさが一段階増しており、公道ではほぼどうにもならないなというムードがただよいます。フロントタイヤが常時強固に路面に接地する感触は、ルーテシアでもありますが、メガーヌではさらにがっしりしている印象です。
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全体の洗練度では後発のルーテシアにやや劣りますが、走るうえでの作り込みが一段上だということはひしひしと感じられます。力を使い尽くす場面は日本の公道ではほとんどなさそうですが、ニュルブルクリンクのようなコースを全開で走っても馬脚を表さない、というようなことを、随所で感じ想像しながら、走りを味わうというクルマかもしれません。今回の車両は、R.S.273ファイナルエディション。メガーヌの通常モデルは本国では既にだいぶ前に発表されており、やがてR.S.も導入されることになるはずです。
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(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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