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ダイハツ・ミラ イースに試乗

ダイハツ・ミラ イースの新型に試乗した報告です。乗り味などに熟成が待たれると感じる部分もありましたが、非常に力の入った開発がなされたクルマであることもわかりました。



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外観は先代のイメージを残しながらも、エッジのシャープなデザインで、なかなか存在感がある印象です。先代は、エコでエコノミーでストイック、スマート、という印象でしたが、新型はそれだけではなく、プラスαの主張が加わった、というふうに感じます。
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リアビューも先代のイメージを残しますが、やはりシャープなデザインです。バックドアは近年のダイハツが採用する樹脂バックドアを採用しており、今回は初めて内製になっています。ボディサイドのシャープなプレスのショルダーラインにも注目です。
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ボディ骨格の展示。水色の部分が厚板ハイテン材で、ボディ外板にまで用いられています。これはムーヴで初めて採用されているもので、ミラ イースは立体的なプレスラインがやや目立つので、ボディ外板に厚板ハイテン材を使うのはそれなりに大変だったようです。バックドアの開口部の周囲が赤く塗られていますが、この部分はボディ剛性が高まるよう、開口部の造形をスムーズにしています。そのほかの部分も、高度な溶接方法を採用するなどして、重量増、コスト増を抑えながら、ボディ剛性を確保する工夫が全面的に取り入れられています。
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エンジンは自然吸気のみの設定。今回従来比最大-80kgと、大幅に軽量化されたため、ターボなしでも十分なパワー感を得ている印象でした。CVTの設定なども、比較的きびきび走る仕様になっているようで、出足でもストレスなく加速します。
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写真でわかるように、ノーズ部分のラジエター取り付け用のサポート材も、金属ではなく、黒い樹脂製が採用されており、軽量化に貢献しています。このほか燃料タンクも樹脂が採用されており、徹底的に軽量化がはかられています。
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内装も外装同様に充実したデザインとなっている印象。ダッシュにはソフトパッドは使用していませんが、質感などはなかなかのものです。いわゆるハイト系の軽自動車と違って、派手なデザインではなく堅実ですが、大人びた良さがあります。ライバルであるスズキのアルトとは、違った世界観でデザインされているのが興味ぶかいところです。
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リアシートは若干小ぶりな印象で、座面の長さも短めですが、足元スペースをはじめ、後席の広さは十二分なものがあり、ヘッドルームも十分です。ただ乗り心地として後席でのつきあげは、もう少し抑えてほしいというのが率直な感想で、ロードノイズも同様です。
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後席と比べると前席はだいぶよく、路面しだいではやはり硬めなところは感じられましたが、走り方によっては、フラットで快適な乗り味を楽しめました。
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走りに関しては、今回乗った14インチを履く上級モデルでは、街中でちょっと足が硬めかなという印象です。空気圧の設定も影響しているかもしれません。そのいっぽうで、ステアリングはセンターがやや曖昧で、高速域では、そこが重要なクルマではないにしても、直進安定性がもう少しほしいという印象です。ボディ剛性に関しては、非常にしっかりとしていてクルマ全体の印象として上質感がありました。遮音の工夫と、足回りの設定をもう少し検討することで、もっと快適に仕上がるかと思いました。クルマのもつ基本性能の資質は十二分だと感じました。乗り心地に関しては、タイヤが13インチだともっとマイルドになるとのことです。
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こちらは、マゼンタの塗色の車両("マゼンタベリーマイカメタリック")。女性に訴える色だろうとは思いますが、ちょっと珍しい色です。このほか黄色も鮮烈な黄色です。
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新型ミラ イースの注目点は、先代のように燃費やエコノミー一辺倒ではなく、積極的な魅力を与えたということと、大幅な軽量化です。軽量化は、ライバルのスズキ・アルトが大胆な軽量化を実現してきたので、対抗するために、相当の力を注いで成し遂げたようです。アルトの場合は、全面新設計のシャシーによって実現していますが、この2代目ミラ イースでは、そうではなく、実はダイハツの新プラットフォームであるDNGAの概念を途中から採用しているにすぎません。ある意味DNGAのたたき台としてのクルマで、ダイハツとしては"DNGAの原点"と言っています。そのように既存シャシーをベースにしての650kgまでの軽量化は、容易ではない開発だったと聞きました。乗り手はそんなことは、ほとんど知ってはいないわけですが、心して見ると、なかなか見どころの多いクルマで、開発陣の意気込みが、外観デザインをはじめ、各部から滲み出ているのかもしれません。
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(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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