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フォード・クーガに試乗

フォード・クーガに試乗しました。前回のエコスポーツと同様にSUVですが、同じフォードでも少し雰囲気が異なります。とはいえやはりフォードらしさを感じました。
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左がクーガ。写真だと右のエコスポーツと同じくらいに見えますが、実際はひとまわり大きく、全長4540mm、全幅1840mmあります。デザインのテイストも両車はだいぶ異なります。全体の印象として、いささか安易ですが、エコスポーツがラテン的だとすると、クーガはアングロサクソン的、というようなたとえをしたくなります。
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クーガはフォーカスのプラットフォームをベースとしています。フロントのデザインなどどこかフォーカスと共通性を感じさせます。しかしクーガはSUVとしてスタンダードなスタイリングに思えます。フロントノーズにかけてのラインなどは流線型的でシャープですが、全体的には質実剛健にまとめられている印象です。これはクルマのつくりとしても感じられました。
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サイドウィンドウのグラフィックなどもフォーカスに通じるものがありスマートですが、リアから見てもやはり質実剛健で堅実な印象です。SUVだからなおさらそうであるべき、とも思えますが、そのまじめさがフォードらしさ、のようでもあります。もちろん存在感やスタイリッシュさも追求されていますが、思うにフォード車は「ふつうのクルマ」として成り立つクルマづくりが、使命としてあり、クーガではとくにそれが感じられたように思います。
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ちなみにこれがフォーカス。2014年に乗ったときのもので、その後のマイナーチェンジで顔は変わっています。フォーカスはシャシーの評価が高く、一度じっくり乗ってみたいと思っていましたが、その機会を逸してしまいました。
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クーガに戻ります。クーガもエコスポーツやフォーカスなどと同様にライトブルーをダッシュボードのメーターやスイッチ類の配色に使っています。クーガはフォーカスほどはスポーティさを感じませんが、十分フットワークはよいようです。車重が1720kgあり、フォーカスよりはかなり重く車高も高いので、その分それ相応の走りになっている、という感じです。乗り心地は町中の低速域ではちょっと硬めに感じました。タイヤはまったくのオンロード用タイヤで、スポーティ車向けというべきコンチスポーツコンタクト5を履いていました。サイズは235/50R18でした。
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エンジンは1.6リッター4気筒直噴ターボのエコブーストで、182ps/240Nmと十分なパワーがあり、車体の重さをものともしません。ちなみに2WD ではなくちゃんと4WDであり、前後トルク配分を無段階に自動制御するインテリジェントAWDに、さらに左右前輪のトルク配分を調整するトルクベクタリングを備えるので、ハンドリングについてはまったく安定しています。峠道の登りで荒くアクセルを踏みこんでもタイヤが空転する気配がまったくなくスムーズに曲がりつつ、ぐいぐい前へ進んでいきました。
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スポーティな基本性能を備えたクルマですが、シフト操作をマニュアルモードでするには、シフトレバー右腹に付く+とーのボタンでする以外なく、シフトレバーの前後動作も、ステアリングパドル動作も、できません。昨今普及しているステアリングパドルで簡単に操作できないのはおっくうに感じるかもしれませんが、まあ本格的スポーツ走行でなければ、左手親指一本で押すこの+ーボタンで十分用は足ります。それよりも、いちどボタンを押してマニュアルモードにすると、時間がたっても、あるいは信号などで停車をしても、マニュアルモードが解除されないので、これはとまどうことがありました。停車後に発進加速しても1速からシフトアップしないのです。ただそれもSモードから通常モードへとシフトレバーを戻せば元のATモードに戻るので、慣れれば大丈夫だろうとは思います。
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サイドブレーキは写真でわかるとおり、電動ではなく手動式です。写真のようにL字型ですが、長いバーをひっぱり上げる通常タイプのものとまったく同じ動きをします。
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ダッシュボードのデザインはフォーカスと共通性が感じられます。あたりまえですが、エコスポーツよりは乗った印象として、より上級感があります。
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グレードはTitaniumで、内装はレザーとなります。
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後部座席を畳むことも可能ですが、そうしなくてもこのように十分な積載スペースがあります。リアバンパー下に足を入れると自動でテールゲートが開閉するハンズフリーの機構をTitaniumは装備します。
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ボディのつくりなどは、たいへん頑丈という印象でした。全体にしっかりつくられたクルマで、SUVとしても基本に忠実なつくりをしているのだと思います。楽しさ、ということでは、エコスポーツのほうが、親しみやすく楽しさがあり、上級のこのクーガはもっとしっかりしているので、おもしろみはあまり感じませんでした。しかし実際所有して日常ユースや旅などで長く深くつきあうと、たよりになり、飽きたりすることのないクルマなのでは、という気がしました。
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フォード・ジャパンの人はエコスポーツは素うどんのようなクルマで・・、と話していましたが、それを言うならクーガは讃岐うどんや稲庭うどんのかけうどんか釜揚げうどん、というところでしょうか。伝統のある上級品でも、あくまで余計な具などを入れない、うどんのよさが味わえるタイプ、のクルマ、という感じ・・。もっとも、単にボディカラーが白いから、うどんのように感じた、というだけかもしれませんが・・。

クーガは、SUV車として、よいクルマだと思います。ひとつの見方では、まっとうに、ふつうのSUVだとも言えそうです。さらにいえばフォードとは、「ふつうのクルマ」だとも言えそうです。これについて、ひき続き次回で考えたいと思います。
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(レポート・写真:武田 隆)


リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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