トップページ>>メルセデス・ベンツCLAシューティングブレークに試乗

メルセデス・ベンツCLAシューティングブレークに試乗

メルセデス・ベンツCLAシューティングブレークに試乗した印象です。Aクラスの兄弟というべき前輪駆動モデルですが、これほど洗練されていたのは、ちょっとした驚きでした。

clab02372.jpg
先に導入されたCLAクーペのワゴン版、あるいはハッチバック版というべきボディです。いわゆるワゴンほどは荷室スペースがめいっぱい広くはないですが、その分優美なルーフラインを持ちます。サイドのウィンドウグラフィックは、近年のメルセデスの特徴で、アーチ型に弧を描いています。そのため実際のルーフラインよりも、クーペ風の優美なボディのように見える効果があります。まるで「柿の種」(スナックの)のようなウィンドウグラフィックです。この赤いクルマは、CLA180シューティングブレーク・スポーツで、バンパー形状が特徴的です。

clab02435.jpg
同じCLA180シューティングブレーク・スポーツで、グリルやバンパー形状などが少しスポーティな意匠になります。「柿の種」のウィンドウグラフィックだけでなく、ボディ下半のショルダーラインもアーチを描いているので、写真を撮る角度によっては、車体がえびぞっているようにも見えます。実際に見ると独特ではありますが不自然なボディ形状ではなく、ただボディ後半をぎゅっとしぼっていることは感じます。とにかく、ワゴンではなく、シューティングブレークなので、伊達な佇まいが、大きなポイントです。

clab02405.jpg
真横から見たところ。前輪を切った状態なのですっきりしませんが、真横から見るとスムースで優美なボディがわかります。フェンダーのとくにリアのふくらみをことさら強調したりするようなデザインではなく、女性的というほどではないですが、優美さを感じさせるデザインです。知的、というのとも違いますが、マッチョではなく、どちらかというと、なで肩なデザインなのに、走りの充実感も表現されているところが、滋味深い感じです。

clab02143.jpg
テールゲートを開けたところ。4ドアモデルのCLAクーペとテールランプ形状などは同じらしく、このように開口部は必ずしも広くはありません。リアゲートの角度も寝ているので、荷室スペースは四角いボディ形状のワゴンタイプよりは劣ります。しかし通常のハッチバックよりは広く、まずは実用的には十分なものがあります。

clab02277.jpg
これはCLA250シューティングブレークです。バンパー形状がシューティングブレーク・スポーツとは異なります。このボディカラーだとボディ全体がかなり丸みを帯びているのがわかります。近年のメルセデスの特徴です。

clab02309.jpg
これも同じ車両。グリル内が黒一色です。赤い車両よりも落ち着いた外観ですが、250は2リッター、211psなので、180の1.6リッター、122psよりはパワーとトルクは上まわります。

clab02148.jpg
ダッシュボード。写真は、特別仕様のCLA250シューティングブレーク・オレンジ・アート・エディションのもので、ディテールが少し特別な仕上げですが、通常モデルも基本は同じです。もとはといえばAクラスをベースに各部を少しグレードアップしたような成り立ちです。ボディ外観とマッチした雰囲気で、現代的です。

clab02394.jpg
後席はこのような感じ。くだんの窓の線でまどわされますが、ルーフ自体は比較的まっすぐ後方まで伸びているので、ヘッドルームは十分あります。足もとのスペースもしっかりあり、空間としては後席居住性は十分です。ただし閉塞感は若干あります。「柿の種」のせいで窓面積が狭く、さらに前席シートバックがヘッドレスト一体型なので大きく、前方視界がさえぎられます。そのかわり前席の座り心地は良好なわけですが。

clab02333.jpg
走った印象は、非常によいものでした。限られた時間を街中を中心に走っただけでしたが、1.6リッターでもパワーは十分ある印象です。ステアリングは握りが心地よく、少し車体がゆれるようなハンドルさばきをしても、極めて滑らかでナチュラルに車体のゆれが発生し、おさまる感じでした。サスペンションも、ドイツ車でありながら乗り心地が低速でもごつごつすることがなく、速度がのればさらにスムースになります。洗練されて上質な乗り味でした。
-
乗り心地に関しては、広報の人に聞いた話では、先に出たCLAクーペは当初硬さを指摘される傾向があったのが、その後改善され、シューティングブレークはそれと同じような仕上がりだとのことです。もともとはベースのAクラスが硬いと指摘されていましたが、まあそれは、キャラクターとしてそうなのだ、という話でした。
-
Aクラス一族は、今の3代目になって前輪駆動の機関を刷新し、それが硬いものだから、「ベンツはFFにまだ習熟していないのではないか」という話を、元某メーカーの実験部の人としたことがありました。しかし今回乗ったクルマで、習熟どころか、超習熟、ということを目の当たりにした次第です。


(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

ウェブページ