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JAIA輸入二輪車試乗会

4月7日・8日、『第1回JAIA輸入二輪車試乗会・展示会』が開催されました。その様子をご紹介します。(レポート:高杉文生)

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トライアンフ ボンネビルT-100
 2001年に復活したトライアンフ製DOHC 360°クランク空冷バーチカルツインエンジンは、排気量865ccから最高出力68ps/7,400rpmを発生します。一見キャブレターのような外見のケイヒン製インジェクションユニットが目を引きます。雰囲気やスタイルは60~70年代のクラシカルなもので、アップハンドルに大きなシートはネイキッドの王道という感じです。
 乗ってみるとツインエンジンの鼓動感はあまり感じませんが、振動が少なくスムーズに吹け上がります。
 乗り味としては前輪19インチのためか乗り始めは倒しこみにくく穏やかなハンドリングに戸惑いましたが、しばらくして乗り慣れてきたところ違和感はなくなりました。むしろアップライトなポジションでタイヤの接地感もわかりやすく、街乗りでもツーリングでも活躍しそうです。外見はクラシカルですが中身は現代的なので、想像するより速いペースで走れます。欲を言えば排気音がかなり静かなので、可能な範囲でマフラーをカスタムしたい一台です。


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インディアン チーフ・ヴィンテージ
 バランサー内臓のOHV・1,811cc空冷Vツインエンジンは、ピークトルクの161.6Nmを3000回転で発生し、379kgの車体はゆっくりと速度を上げていきます。振動の抑えられたそのエンジンはハーレーとは違って、ゆるゆると独特の雰囲気で回り、自然とのんびり走りたくなります。
 乗り始めはスムーズなだけかと思っていましたが、少し慣れてくるとアクセルを開けたときの大排気量Vツインエンジンの鼓動感がハッキリと感じられました。これが意外に気持ちよく、病み付きになりそうでした。しかしながらこれは広く比較的直線に近い道路の話で、くねくねした道や狭い道は想像通りあまり楽しくないです。 
 外見はクラシカルですが、4輪のようなスマートキーやABS、メーターパネルはデジタルタコメーターや平均燃費等々豊富な機能を装備するもので、中身は現代的です。
 気になった点は、大きなスクリーンの防風効果は高いものの、試乗時は雨天のため水滴がスクリーンに付き、視界が悪かったのが残念です。また、シフトペダルがスタンダードでは通常のつま先側1本でしたのでオプションのシーソーペダルのほうが扱いやすいと思われます。
 今や街でかなり多く見かけるハーレーとはまた違ったアメリカンの世界を体感したい方にはぜひお勧めの一台です。


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MOTO GUZZI V7 RACER
 V7シリーズのビンテージレーサー仕様です。モトグッチの伝統ですが、今や珍しい横置きVツインエンジンの存在感があるスタイルです。試乗車はロケットカウルとバックステップ付きでよりレーシーな雰囲気に仕上がっていました。 
 エンジンはOHV 2バルブ744cc空冷Vツインで最高出力50ps/6,200rpmです。決して速くはないですが、回せば198kgの車体を走らせるには充分なパワーです。2,000rpm以下でもギクシャクせず扱いやすく、エンジン特性的には渋滞時も苦になりません。
 ただ、ポジションは狭いセパレートハンドルにバックステップで、とてもコンパクトになっています。まさにレーサーでサーキットや峠を走りたくなります。そのポジション的な問題からから街乗りは楽なものではありません。もう一つ気になったのはシフトストロークが大きいことがスポーツ性をスポイルしているように感じられました。
 普段は格好良いスタイルときれいなクロームメッキタンクを眺めるだけにして、たまに高速道路を走って山道を走りに行くような贅沢な使い方が似合う一台です。


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BMW RnineT
 現在のラインナップでは唯一の空油冷DOHC 1,169ccフラットツインエンジンの最高出力は、110ps/7,750rpmです。停車時にブリッピングすると車体がぐらっと傾く水平方向エンジン独特のフィーリングに思わずにんまりしてしまいます。試乗車はオプションのアクラポヴィッチ製のサイレンサーに換装されており、スタンダードより明らかに元気のいい排気音です。
 ポジションは軽い前傾姿勢です。多くの日本人にはややワイドに感じられる890mm幅のハンドルバーの影響で乗り始めは多少の違和感がありました。スタイルから想像していたのとは違い、トライアンフ・スクランブラ―のような雰囲気です。アクラポビッチ・サイレンサーの取り回しがアップタイプのせいで余計にそのような気がします。
 乗り慣れてくると少しずつ違和感もなくなり、広いハンドルバーはウエット路面でもむしろ抑え込みやすく接地感もわかりやすいので神経質にならずに素直にコーナーに入っていけました。
 スタンダードのネオ・クラシカルなスタイルをそのまま楽しむのも良し、また純正のカスタムパーツがいろいろと用意されているので自分好みに仕上げるのも良し、と自分なりにいろいろと楽しめる一台です。

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can-am RT Limited
 まず目を引くのは立派なフロント二輪です。
 試乗車は6速セミオートマチック仕様、クラッチ操作はありません。停止時も地面に足を着く必要もありません。ブレーキは右足のペダルのみで前2輪と後輪の3か所が同時に利きます。一言で評するなら「バーハンドルのクルマ」です。
コーナーでは多少ロールしますがバンクしません。横Gに耐えながらハンドル操作することで曲がっていきます。最初のうちはどうしても2輪感覚が抜けずにかなり違和感がありましたが、違う乗り物だと割り切って走っているうちに慣れてきました。コーナーリングのコツが少し飲み込めてくると、独特の感覚が楽しくなってきます。
 ロータックス1,330cc水冷直列3気筒エンジンは115ps/7,250rpmを発生し、459kgと決して軽くない車体を充分以上に軽快に走らせます。防風効果のあるスクリーンや便利なリバース機能、2人分には充分な155リッターのストレージ容量もあり、バイクでもクルマでもない新感覚なオーンプエアを楽しみたい方にお勧めの一台です。

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BMW R1200GS
 当初、悪天候のウエット路面なのにシートの高い巨体を選んでしまい後悔しましたが、走り出してみると意外に扱いやすい。むしろ足回りはしっとりとして荒れたウエット路面でもしっかり捉えていて絶大な安心感です。悪条件下でその良さが浮き彫りにされた形です。
 空水冷DOHC 1,169ccフラットツインエンジンは最高出力125ps/7,750rpmと強力で、245kgの車体はあっという間に100km/hに達するほどパワフルです。エンジンが官能的・刺激的かどうかの判断は人により分かれますが、きっちり仕事をこなす頼もしいエンジンです。
 ハンドリングは見た目からは想像できないほどタイトコーナーもひらりひらりと軽快で、高速走行も抜群の安定感です。全てにおいて高次元でバランスしており、欠点らしい欠点が見当たりません。あらゆるシチュエーションの長距離ツーリングには最適です。巷で人気が高いのがよくわかります。足つき性に問題なければぜひお勧めしたい一台です。


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Ducati 899 Panigale
 スーパークアドロ水冷4バルブ898ccc Lツインエンジンの最高出力は115ps/8,500です。ウエット路面のためパワーモードやABS、DTC等の電子デバイスが搭載されています。試乗車は一番大人しいモードに設定してありました。そのためパワー感はそれほどありませんでしたが、レーシーなポジションがライダーをその気にさせてくれます。筆者も以前はスーパースポーツを好んで乗っていた時期もありましたが、数年前から各部身体がついていかず、断念していました。久しぶりに乗るSS、しかも雨ではやはり辛いものでした(笑)。
 899 Panigale は峠道までの往復を我慢できれば最高に楽しい相棒です。ただ残念なのは、日本仕様では騒音等の規制によりエンジン下部クラッチカバー辺りに黒い樹脂の大げさなカバーが付いたり、マフラーはテルミニョーニのようですが、これまた大げさなまるで竹やりのようなカーボンサイレンサーが装着されており、折角のスタイルが台無しになっている事です。オーナーになったらぜひカスタムしたい部分です。
 今回、荒れたウエット路面では本領発揮できず残念でした。次回はフルパワーモードで晴れた日の峠道でまた挑戦したい一台です。


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Ducati Diavel Carbon
 実車のスタイルはとにかくアクと押し出しが強いです。まるでエイリアンの口ようなヘッドライト回り。リアに240ミリの極太タイヤ等々。ポジションは低いシートとロングタンクに覆いかぶさり、そこからハンドルバーに手を伸ばすという独特なものです。
 日本で発売された当初、公道で初めて見かけたときはドゥカティだとはとても思えませんでした。個人的にはバットマンカーを連想させられます。しかし今やこれまでとは違ったファン層を獲得し人気ナンバーワンのようです。
 乗りはじめの走行モードは3段階の中で一番穏やかなアーバンモード。そして途中から真ん中のツーリングモードにしました。雨天のため一番元気なスポーツモードにはしませんでした。
 テスタストレッタ水冷4バルブ1,984cc Lツインエンジンの最高出力は日本仕様でも112ps/6,500rpmとパワフルですが、高回転まで回さなければ思いのほか低速トルクもあるため適度に扱いやすいです。Diavelはドゥカティ流クルーザーですが、やはりそこはイタリア車、動きは軽快です。走り出せば紛れもなくドゥカティです。ハーレーのようなアメリカンたちとは一味違ったスポーツ・クルーザー感覚を楽しみたい方にお勧めの一台です。


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Harley Davidson FXDL
 数年前にカタログ落ちしてから久しぶりの人気モデル復活です。タンクカラーやグラフィックほか細かい部分が、ショベルヘッドの1979年当時のモデルのようになり懐かしい雰囲気です。
 エンジンはお馴染みの1,584ccツインカム96ですが、スペックに表れない細かな改良が加えられているようです。近年、特にハーレーの排気音はかなり抑えられていますが、低回転からトルクがあり、何より明確な鼓動感がある傑作エンジンです。フロントブレーキはダブルディスクとなり制動力も大幅にアップしています。
 ハンドリングは300kg以上ある車体の割りには軽快です。ハーレーのラインナップの中ではスポーツスターに次いでコーナーも楽しい1台ですが、バンク角は小さいので峠道では注意が必要です。
 ポジションは、試乗車に装着済みだった着座位置調整用のクッションのようなもののせいで妙に前に座らされとても窮屈でした。相当小柄なライダー以外は必要ないと思います。試乗途中に工具なしで簡単に取り外せるものでもなく、その場で諦めました。
 無理を承知で個人的に手に入れたら、まずは排気系をカスタムして等々、妄想が膨らみます。旧型ローライダー・オーナーとしてはちょっとぐらっと来た魅力的な一台です。


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BMW S100R
 スーパースポーツS1000RRのストリートファイター仕様です。エンジンはBMW製999cc水冷4気筒DOHCで日本仕様の最高出力は、S1000RRの199ps/13,500rpmから156ps/10,000rpmへ下げられていますが、発生回転も下がっているので公道ではむしろ扱いやすくパワーも十分強烈です。試乗当日は生憎の雨でウェット路面のため不用意なアクセルワークは禁物でした。印象は高回転までシャープに吹け上がる官能的なもので、同じ4気筒でもK1300の大排気量4気筒とは違い、よりシャープで「スポーツ」したくなるエンジンです。
 また、試乗車はオプションのアクラポヴィッチ製スリップオンサイレンサーに換装されていたため、適度に迫力ある排気音がレーシーな雰囲気を醸し出しいていました。
ポジションは、バーハンドルで軽い前傾姿勢になりますが、街乗りやツーリング時にも扱いやすいものになっています。
ハンドリングも軽快で、コーナーが待ち遠しいです。BMWのシャープな最新マルチ・エンジンを、スーパースポーツより手軽に楽しめる一台です。


筆者略歴

高杉文生(タカスギ フミオ)
東京生まれ。身長179cm、体重72kg。高校1年の時に2輪免許を取って以来、気が付けば40年近く乗り続け、国内外の様々なオートバイを見てきた。
車歴は、ホンダはCB50に始まりCB1000SFまで5台、カワサキはZ400FX からゼファー1100まで5台、ヤマハはXT250とシグナスX-SR、スズキはGSX-R1000、アドレスV125SLtd、スカイウエーブ400。ドゥカティは900SLからモンスター1100まで7台。ハーレーは883スポーツスターからロードキングまで9台。ビューエルは2台。ヴェスパは2スト&4スト3台、など多岐にわたる。現在はヴェスパ、モンスター、ビューエルを所有。


リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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