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東京オートサロン(その2):メルセデス・ベンツ、ルノー、マツダ

1月に開催された東京オートサロンの報告(その2)です。
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メルセデス・ベンツ日本が今回初参加したのが注目でした。今までも参加を検討してはいたそうですが、イベントの集客力もさることながら、若さ、新しさが目立つ最近のメルセデス・ベンツの動向が、参加を決断させた面があるようです。メルセデス自身もイベント直前に昨2013年の新規登録台数が過去最高を更新したことを発表しました。
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十分広いブースにメルセデス、SMG、スマート合わせて17台展示とのことで、とくにAMGはこれだけの台数が集まることはなかなかないそうです。メルセデス・ベンツにとって、日本市場は世界でだいたい6位か7位ぐらいでも、AMGに関しては独米英に次ぐ4番目だそうで、ドイツ本国も日本市場を積極的に考えているとのことです。
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冒頭の写真はブースの目玉「A45 AMG 4MATIC」のスペシャルバージョン、「ペトロナス・グリーン・エディション」。現在のメルセデスのF1マシンのイメージで内外装を特別仕立てにしたもので、30台限定。F1のスポンサーカラーを思わすグリーンが、筆で散らしたようにボディサイドに入っています。内装も「F1と同じ緑」が各所に配されています。ペトロナスカラーのF1は持ってこないのかなとも思いましたが、スタッフの方によると、F1本体がくると他のが食われてしまう‥‥とのこと。まあイベントのコンセプトにF1は少し合わないのかもしれません。それにしても4月初頭現在、メルセデスF1は開幕2連勝で、「ハイブリッド元年」のF1選手権をリードしています。
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このクルマも緑ですが、F1とは関係ないものです。ほかにも数台目をひく色のクルマがありました。このクルマはC63AMGクーペをドイツ本国のAMGパフォーマンス・スタジオが特別に仕立てたもの。ショー用の仕立てではなく、ワンオフでつくられたのを日本に持ってきたもので、既にオーナーが決まっているとのことでした。日本向けにコンプリートカーをオーダー仕立てにするのは極東ゆえの遠距離もあってむずかしいそうですが、特別モデルについて本国といろいろ交渉があるようです。
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かなり広いブースはコンクリートの床がそのままで、サーキットの路面という設定だそうで、各所にそれらしきマーキングなどがしてありました。このCLA180はAMGではなく、これも派手な色合いですが参考出品ということです。今回の初展示は、メルセデス・ベンツのイメージをくずさないことを意識しつつ、来場する若い層にアピールすることを考えたそうです。昔のベンツであれば、このようなイベントに展示すること自体なかったと思われます‥‥。
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ルノー・ジャポンの展示。ルノーの場合も、AMGに相当するようなラインの「ルノー・スポール」が、日本市場では重要度が高く、ルノー・ジャポンも積極的に展開しています。昨年導入されたルーテシアの2台とともに、メガーヌ・ルノー・スポールの特別仕様が展示されていました。「ジャンダルムリ」といういわゆる高速警備隊の車両のレプリカで、限定車両です。ちなみにジャンダルムリは、「ポリス」とは違い、軍直属の警察機構です。このゼブラ模様は道交法に抵触するので展示用の特別なものだそうです。ジャンダルムリのステッカーは購入後に貼ることになっており、そもそもはこの車体色の青がメガーヌRSでは日本初導入です。本物とは少し色が違うそうですが、仏本国からこの青をジャンダルムリ仕立てにするのはどうか?、という提案があったそうですが、その仕様にして売る決断ができた輸出先は日本だけだそうです。ジャンダルムリは以前にはスバル・インプレッサが採用されたことが少し話題になりましたが、採用されることはモデルの高性能イメージに箔が付くことで、とくに日本市場におけるメガーヌRSにとっては、効果がありそうです。
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マツダのブースには、アテンザ(マツダ6)のレースカーが展示されていました。昨年北米のグランダム・シリーズで活躍したマシンで、年間のクラス総合優勝を果たしています。個人的には、今のマツダのブランド展開には、こういったマシンの存在が必要ではないかと思います。こういうものがドンとあると、マツダがアピールする走りのスピリッツが伝わりやすいかと思います。
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これは昨2013年の展示で、プロトタイプクラスのマシンです。アテンザもプロトのマシンも、スカイアクティブDのディーゼルを搭載します。今年2014年はグランダムとアメリカン・ルマン・シリーズが統合されてクラスが変わってしまったので、アテンザではなくプロトタイプマシンで参戦となります。今年のプロトマシンはこれとは違い、日本のマツダのデザイナーが関与して、レースマシンの外観のイメージも重視しているそうです。ドイツのアウディなどはとにかくレースをPRとして活用することを徹底している印象ですが、マツダも期待されます。日本のレース関連のスタッフの方に話を伺ったところ、プロトで仏本国ルマン24時間への参戦も今模索しているところだそうです。模索とはつまり、レギュレーション設定の交渉という面があるようですが、早ければ2015年から行けるのかもしれません。さしあたってはLMP1ではなく下のLMP2クラスになるようですが、スタッフの方の話では、やはり「マツダはルマン」という思いを持っているとのことで、状況が整えばいつかはまた総合優勝にチャレンジになるのかと期待を持ちました。
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隣は、マツダのスポーツ活動をサポートするMZ Racing との共同ブース。手前はデミオのスーパー耐久シリーズ参戦車両。奥はロードスターのナンバー付きワンメイクレースの車両で、パーティレースとして10年以上開催されているそうで、パーツ類なども充実しています。ユーザーが走る機会の提供も積極的にしているとのことで、ブースにはマツダのキャッチフレーズの「Be a driver」をアレンジしたフレーズが掲げられています。アテンザ・レーサーが走ったアメリカではレース文化が盛んですが、その中でマツダを使うユーザーが多く、パーツ販売などのビジネスとしても成り立っているくらいだそうです。そういうのは文化としかいいようがなく、日本市場でメーカーが動いたからといって、にわかに変わるものでもないかもしれませんが、マツダに限らず各メーカーがスポーツに対してまた前向きになっているように今回少し感じました。
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マツダのメインというべきブースは、アテンザのグランダム・レーサーを先頭に、アテンザ、アクセラ等のカスタマイズされたコンセプトカーが並んでいました。写真のアクセラはディーゼル・スポーツとしての提案だそうです。「アクセラスポーツ・デザインコンセプト2014」という名称で、デザイン的な雰囲気がいかにもあか抜けていました。「魂動デザイン」の展開になるようです。マツダにとってデザインも重要要素ですが、こういうコンプリートカーを路上に送りこむことが、ひいてはブランドのPRになるのかもしれません。
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(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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