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日産エクストレイル発表会

昨年のモーターショーでも展示されていた日産X-TRAIL(エクストレイル)が12月16日に発売されましたが、それに先だって12月11日に、横浜の日産グローバル本社ギャラリーで発表会が行なわれました。

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ハードウェアや走りの評価などについては別稿がありますので、ここでは発表会で気づいたことなどをいくつか報告します。
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プレス発表はウィンタースポーツのシーズンが始まっている時期でした。エクストレイルはそもそもスノーボーダーに向けたPRのある車種で、会場にはこのようなセットが組まれていました。「X」の文字が大きく掲げられています。空中には小型ヘリコプターも見えます。
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外観は、旧型から少し路線変更されました。グローバルな戦略から車種が統合整理された背景があるようです。旧型の個性が少しなくなりましたが、「タフギア」というコンセプトは少なくとも日本市場向けでは重視して受け継がれているようです。新型をスタイリングから見て、クロカン的なごつさよりもスマートさが勝っているのを残念と思う向きもあるかもしれませんが、適度にSUVらしいタフな感じや、アクティブな感じもあり、好印象という気がします。ただフロントマスクはふつうに乗るには格好よすぎる気もします。全体に日産のほかのSUV車と共通する印象です。旧型ボディの写真はあとで出てきます。
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リアビューは比較的ふつうですが、手慣れている印象です。ボディサイドのウェストラインが大胆にキックしているのが大きな特徴かと思います。別メーカーから登場が予想されるモデルなど、近年はSUVでも極めて凝ったデザインのクルマもありますが、新型エクストレイルはシンプルに思い切りよくデザインされている印象で、スポーツっぽい雰囲気もあります。自意識過剰でなく力んでいないところは、現代的な感覚の層にちょうど合うのかもしれません。もちろんそうでない感覚の層でも乗れそうなふつうさもあるようです。
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見た感じダッシュボードもセンスよくまとめられている印象でした。メカニズムは従来からの「ALL MODE 4×4-i」と称する電子制御4WDを受け継ぎながら、世界初を謡う「アクティブライドコントロール」、「アクティブエンジンブレーキ」、「コーナリングスタビリティアシスト」を採用するなど、シャシー制御技術は先進的なものが盛り込まれています。
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ドアトリムの部分です。些細な部分ですが、この加飾パネルがちょっと変わった感じでした。
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雪がついたまま座ってもOKという防水シート。「タフギア」らしい部分。触ってみると質感が心地よく、透湿性も確保されているそうです。
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これも「タフギア」らしく、アウトドア派の用途を考えたラゲッジスペース。間仕切りの「ラゲッジボード」が軽量化されて片手で扱うことができるそうです。ここも防水仕様のようです。
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エクストレイルのPRの一環として開発された「X-TECH GEAR」。新型エクストレイルに搭載されている技術から発想された「まったく新しいウィンタースポーツギア」とのことです。一番左の、正面展示にもあった小型ヘリコプターは、「インテリジェント・シューティング・ヘリコプター」で、エクストレイルの「インテリジェント・パーキング・アシスト」と「アラウンドビューモニター」から発想されたとのこと。スノーボーダーの滑りを上空から自動で追尾して撮影するというアイテムです。最近の日産は自動操縦を熱心にPRしたり、電気自動車もそうですが、電脳化に積極的な印象があります。そういう傾向が反映されたと考えるのはうがちすぎと思いますが、とにかく時代に敏感なクルマであるのがエクストレイルのひとつのコンセプトといえそうです。最初これらは製品化されたのかと思い驚きましたが、それはまさかの話でした。
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これは東京オートサロンで展示されていたクルマ。新型エクストレイルには「エクストリーマーX」という特別な装備のグレードが新たに設定されましたが、このクルマはそれをさらに特別に仕立てたもの。コンセプト説明のパネルには「気高く、ワイルドなタフギアとしてアウトドアライフを刺激」、「都会に映える存在感とスタイリッシュさを表現」などとありました。
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発表会時、会場の隅に置かれていたエクストレイルのディーゼルエンジン搭載モデル。さしあたって従来ボディのまま継続販売されます。従来型のボディは、外観としては、意図的にオフロード4WDらしく角張ったデザインにしたように見え、タフな感じがあると思いますが、X-TRAILの車名の由来は、いわゆるX-SPORTS(エクストリーム・スポーツ)ということなので、その点からいうと新型の方が感覚的に合っている気もします‥‥。
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発表会では、「日産X-TRAIL」所属の若干17歳のプロスノーボーダー、角野友基選手が登場。昨シーズンW杯のワールドチャンピオンで、ソチ五輪でのメダルが期待されているようです。
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(レポート・写真:武田 隆)
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さて、ここまで日産エクストレイルの発表会の様子を報告しましたが、今回、知人の糀谷大輔氏によるエクストレイルの試乗記が届いていますので、合わせてご紹介します。


●日産新エクストレイルの印象  糀谷大輔

40分ほど市街地を走っただけの試乗であったが、感じたことを報告したい。
(試乗グレードは、四駆2列シートの20S)

1)新型エクストレイルの位置づけ
新型エクストレイルの登場により、従来のエクストレイルはクリーンディーゼル搭載のモデルのみが残され、デュアリスは廃止され、より大型のムラーノはデザインを変更して継続生産される。ハイブリッド版は今年末に発表される予定だ。

この車格に対して2リッターのガソリンエンジンしか選択肢がない、というのに不満を感じるが、これは日本におけるSUVの使われ方を考えてみると最大公約数的な選択であろう。日本のほとんどのSUVユーザーは、本当の荒れ地を走る必要は無く、四輪駆動のポテンシャルをフルに発揮しなければならない状況に出合うことは極めて少ない。いざ大雪が降れば道路閉鎖となってしまうのは、昨年1月に関東地方に降った大雪の状況を見れば明らかで、北海道や本州北部の一部を除くと、大馬力の四輪駆動車が活躍する状況は限られている。11月から2月の狩猟解禁期間に林道を闊歩しているのは、軽の四輪駆動車だ。それを考えれば、大型のボディに2リッターエンジンの四駆は、現実的な選択かもしれない。

しかし前のモデルがそのスタイルからアウトドア志向を明確に打ち出していたのに比べ、新モデルも実質的にその内容は継続しているものの、デュアリスやムラーノに近づいたスタイリングから、八方美人的に見えるのも否めない。つまるところ、アメリカ向けのボディに日本向けの小さなエンジンを搭載し、経済性を確保した、ということかもしれない。

2)外観、サイズ
これまでの角張ったボディデザインから丸いデザインに変身した。身近に見るとやはり大きい。ボディのサイドラインはホイールハウジングを強調した膨らみで、パワーを表現しており、フロントのV字クロームもマッチョな印象である。後ろ姿は標準的で、現行のノート系と同じ印象だ。好き嫌いはあるだろうが、プロポーションは良く、筆者は好い印象を持った。

全長はこれまでとほとんど変わりがないが、全幅は前のモデルから30mm増えて1820mm、これにより車内のスペースは若干増えたが、街中での運転には少し神経質にならざるを得ない。最小回転半径は前モデルの5.3mを超える5.5mで、切り返しのハンドル操作が増えた。

3)装備
走行中のピッチを抑えるアクティブライドコントロールをはじめ、オールモード四駆として操縦安定性を保つ各種装備が与えられている。オプションでは最近の日産車に共通のアラウンドビューモニターやインテリジェントパーキングアシストも付けられる。グレード別に流行のエマージェンシーブレーキと、車線逸脱警報などが設定されている。これは一種の保険だが、後を走る車に同じ装備が無ければ追突されるのは避けられない。このようなエマージェンシーブレーキは、大型トラックにこそ必要な装備であり、実用化が進むことを強く期待したい。

日産がブレーキLSDと呼ぶステムは、左右のブレーキを独立して制御するもので、スバルのXモードと類似のシステムだと思われる。本格的なLSDがこのようなクルマでどれほど必要かを考えると、車輪の空転をブレーキで抑えることで、もう一方の車輪にいくらかの駆動力を与えることが可能ならば歓迎したい。このシステムの有効性は雪道走行で確かめたい点である。

乗車して気が付いたのは、全てのディスプレイがメーター周りに集中していることだ。これによりダッシュボードはすっきりとしているが、運転中にフロントのメーターを注視することは稀で、ドライバーの視線は常に前後左右に注がれており、視線の隅にいくつかのメーターが入ることは実用性が高いと考える。どのような考えでこのデザインが決められたのか、デザイナーに確認したいところだ。

4)運転しての印象
エンジン音、加速ともに比較的静かかつスムーズで、CVTの変速も問題は無い。この新エクストレイルの走りは十分満足のゆくものだと思ったが、バネ下重量の大きさをやや感じた。17インチのホイールは特別大きなものではなく、特別にバネ下重量が重いとも思えない。しかし路面の凸凹に比較的神経質に反応し、突き上げ感があるのはやや不快であった。標準装備のタイヤ特性も作用しているかもしれない。

走行音は特に高い方ではなく、リーズナブルなレベルに抑えられている。タイヤはイヤーラウンダーが装備されるようだが、これでは雪道の運転には不十分で、別途スタッドレスタイヤが必要となる。ブレーキの操作感も特別な癖もなく、良い印象だ。試乗が一般道のみだったので、パニックストップ、高速走行などは経験しておらず、これは雪道走行とともにこれからの宿題である。

四駆のベーシックモデルの値段が約226万円で、前モデルの199万円と比べると約14%の値上げとなっているが、仕様書を見ても機能の大きな違いは明確ではなく、ボディの大型化やそれに伴う設計変更による差が表れているようだ。ほぼ同じ車格のマツダCX-5の四駆は、2.5リッターエンジン付きで約253万円であり、値段的にはほぼ同レベルである。これを見ると、前モデルはコストパーフォーマンスが高かったことが浮き彫りになる。

クルマ全体の印象として、リーズナブルに編成されていることは感じられたが、それだけに飛び抜けた特徴もなく、小さくまとまったという印象は拭えない。四輪駆動車を購買する層にはマニアックな面が有り、スバルやランドクルーサー、パジェロ等を好むユーザーからは、このような大人しい味付けのクルマに対する評価は低いだろう。しかし路面凍結が現実に発生し、そこで運転しなければならない環境の一般ユーザーにとっては、一つの選択肢であることは間違いなく、それなりの市場性はあると思われる。

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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