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新型ゴルフについて-その3(GTI、モーターショー展示など)

フォルクスワーゲンの新型ゴルフについて、3回に分けて報告しています。3回目はGTIですが、モーターショーの展示車両などについても簡単に紹介します。

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新型ゴルフGTIの日本導入は9月末でした。その直前に行なわれた夏の試乗会で、富士スピードウェイのショートコースなどで短時間ながら、GTIを体験できました。
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新型GTIは、相変わらずノーマルとの外観上の差異は控えめ、というポリシーを守っています。一番の違いはフロントグリルの赤い線とハニカムパターンです。線のほうは、新型ゴルフはヘッドランプまで一直線でひかれるようになったので、ここぞとばかりGTIの赤線も伸ばされています。バンパー下部、ヘッドランプ下のエアインレットの黒いフィンも目立ちます。
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新型GTIは先代モデルに比べて、馬力は9psアップの220psですが、トルクは7.1kgmアップの35.7kgmあります。車重は欧州仕様では42kg軽量化されたようですが、日本仕様の場合1390kgで、旧型比10kg軽量となります。燃費は13.0km/L(10・15モード)から15.9km/L(JC08)へと向上しています。これらの主な数値は一例で、とにかく全域的に進化したといえるようです。
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ショートコースでの走りはごく短時間のもので、こういうコースは久しぶりということもあり、抑えめの走りとなりました。このコースは下りストレートのあと、上りながらきつめのRのコーナーが続きます。それがブラインドになっているのがミソで、奥まで巻いているので、知らないでコーナーに入って行くと出口でアンダーステアの苦しい状態が待っているという、FF車が最も苦手とする状況が続くコースです。しかしそこをストレスなくちゃんと走るのがGTIでした。従来からあった電子制御デフロックの「XDS」を改良した「XDS+」がとくに効いているようで、「XDS+」はコーナリング中に内輪のブレーキ圧を最適に調整して効かせます。こういうコースでもアンダーが出ず、アクセルを躊躇なく踏んで立ち上がれます。神髄を感じられるほどの走行はできませんでしたが、ゴルフGTIは、買い物にも行ける非常に洗練されたクルマでありながら、本格的なサーキット走行もうまくこなせるというのがよくわかりました。
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次に駐車場で、パイロンコースでの走行がありました。ひとつは、フルブレーキをしながらのハンドル操作や、車速がのったところで、急激な右、左のハンドル操作をするダブルレーンチェンジの体験です(上の写真)。スキール音をたて、横滑りも発生しましたが、そういう状況でもコントロールでき、バランスを失わないのがよくわかりました。もうひとつはスラロームと大まわりのコーナーを走るコースでした。プログレッシブステアリングが働いて、小刻みのスラロームをうまくこなし、ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)などのおかげで、コーナーではアンダーがやはり出にくいのが体感できました。新型GTIはESC Sportによって、トラクションコントロールなどの介入度を変更できます。介入が少ないスポーツモードにしたほうが、挙動を自分でコントロールできるわけです。
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GTIの室内は、シートやステアリングなどはもちろん違うものになっていますが、外観と同様、ノーマルのゴルフと見た目の大きな違いはありません。ある意味では、走りもそうではないかと思います。ごくふつうの感じのままに、高度な走りをこなしてしまうわけです。ただ速いのではなく、絶大な安心感、安定感があります。そしてノーマルと同様に洗練されています。
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メーター部分のアップ。ダッシュパネルは、ピアノブラックにカーボンを思わすようなパターン模様が入っているのが違いです。メーターも少し異なりますが、派手な演出はありません。
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このクルマはボディカラーが赤いので目立ちませんが、赤いラインがヘッドランプまで一直線に入っています。ボディカラーの赤がソリッドなので、ゴルフ7のシャープなプレスラインが際だって見えました。
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ハニカム状のグリルパターンが精悍です。さりげなく入るGTIのエンブレムですが、ネームバリューがあるので効いています。これがたとえばGTYだったら、付けている意味がないわけです。ただ、本国にはGTIのディーゼル版のGTDがあり、基本的に同じ外観デザインで、線の色が赤ではなくシルバーかグレーになるようです。ちょっと興味深い存在です。
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当日置かれていた初代ゴルフGTI。1976年登場でした。今や馬力は当時の2倍になったそうです。初代GTIは、コンパクトカーの格好をしていながら、アウトバーンの追い越し車線で、ベンツなどと互角な走りができるというのがニュースでした。クルマの動力性能が底上げされて、今やそういうクルマは珍しくはなくなりましたが、最新のGTIは、おそらくはアウトバーンのような超高速域でこそ俄然真価が発揮されるのではないかと思います。
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個人的な好みを率直に言うと、走るおもしろさの点では、ノーマルのゴルフの方が楽しめる気がします。1.2のTSIなどはスポーティな感じを受けたし、性能を使いきって走りを楽しめるという意味では1.2などは最適です。限られた場所で短時間の試乗だったのでちゃんとしたことはいえませんが、GTIは日本では多少余裕がありすぎるかもしれません。ただ、快適に疲労なしで長距離を高速で走るとか、そういったときには真価が発揮されそうです。安全性能が信頼できることが、心理的な余裕、安心感を与える気がします。アウトバーンで、ノーマルのゴルフが到達できないような高みの領域でも、GTIはビタッと安定しながら走って行くのかと想像します。
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10月8日に発売されたザ・ビートル・ターボ。当日サーキットの場内移動コースを試乗できました。中身は先代ゴルフ6のGTIと同じと考えてよいようです。なのでゴルフ7のGTIと比べると、洗練さでは劣りました。ただそれも超優等生と比べてのことです。キャラクターがあるということでは、GTIよりも上で、ほぼ同じような動力性能が得られるわけです。価格もGTIより安い設定です。意外にもノーマルのビートルとの外観上の差はあまりないですが、リアにはポルシェ911ターボのようなウィングが付きます。両者は大もとをたどるとご先祖が同じで、初代タイプ1「ビートル」に行きあたります。よく考えるとゴルフGTIも、ノーマルのザ・ビートルでさえも、みなターボ付きですが、このクルマだけがターボを名のっています。
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コクピットは、ゴルフの場合のGTIよりも、演出があるようです。ファンカー的なダッシュボードのデザインがベースながら、3連メーターをセンターに追加するなど、GTっぽい雰囲気をただよわせて、意外によい感じに思いました。ダッシュパネルのピアノブラックは、ゴルフの場合よりもこちらのほうがしっくりくる気がしました。
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これはポロ・ブルーGT。GTIほどではないものの、スポーティーなモデルで、従来のハイラインと比べて、燃費とパフォーマンスを向上させています。外観もホイールをはじめとして、精悍さを増しています。これも場内を1周できましたが、やはり洗練されていて、乗り味は、この大きさでありながら高級車の雰囲気を漂わせていました。
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12月の東京モーターショーでの展示です。これはゴルフRです。フロントビューは、フロントバンパーの形状が異なる程度で、先代以上にノーマルとの差異が小さい印象です。ボディカラーは、この青はノーマルのゴルフとは違うようです。
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リアビューは2本出しのマフラーが健在と思いきや、少なくとも欧州仕様では左右合計で4本のようです。ストイックの美学というか凄みがあり、羊の皮をかぶったロケット、という感じです。抜かれて初めて、その速いわけを納得することになるのでしょう。
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ゴルフRの室内。コックピットもやはりノーマルとあまり変わりありません。ダッシュパネルはGTIではなくノーマルと同じ(と思いますが)ピアノブラックでした。メーターの針だけが、Rのテーマカラーというべき青になっています。日本導入が待たれます。
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これはゴルフ・ヴァリアントです。1月6日に発売予定です。前半分は通常のゴルフと同じようです。ただこのクルマは参考出品のRラインなので、バンパーのデザインがゴルフRと似ています。
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これはe-ゴルフ。ゴルフのEV仕様です。前回モーターショーでもゴルフ6のEVが別会場に展示されていましたが、今回はメインブースに置かれていました。今回のVWブースは、モーター駆動車が多く展示されていました。
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e-ゴルフは、グリル〜ヘッドランプの線が、青になります。環境対応の次世代車に青を使うのは、多くのメーカーがしていることですが、VWの青は鮮やかでした。e-ゴルフはヨーロッパでは市販されているようです。
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こちらはe-up!です。up!は、市販化前のコンセプトカーではリアエンジンを採用したものもあり、EVはひょっとするとリア駆動になることもなくはないかと思っていましたが、このe-up!は前輪駆動でした。
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これはtwin-up!です。2気筒エンジンとモーターによるハイブリッド車で、今回展示もされていたXL1の動力装置をup!に搭載したというものです。現場で「ツイン」とはなんだという話になり、2気筒だからかとも思いましたが、VWではプラグイン・ハイブリッド車に「ツイン」という車名を与えているようです。動力が2種あるわけです。
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twin-up!は、内装も白で統一されていました。メーターのデザインが見事でした。よく見るとステアリングのステッチが青です。
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WRCで2013年チャンピオンになったポロR WRCが展示されました。シトロエンのローブがいなくなったとはいえ、本格参戦初年度でのタイトル獲得でした。スポーツカーレースではアウディが10年以上トップに君臨し、2014年からはポルシェが加わり、VWグループの時代は続きそうにも思えます。WRCでも、これからVWの時代が続くのかどうか。スポーツ界では近年独仏メーカーが名を挙げているといえそうです。世界選手権は、F1はこのところフランスが強く、ツーリングカーもフランスが強くなりそうな気配ですが、スポーツカーとラリーはドイツ(VWグループ)が強い現状です。
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(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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