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メルセデス・ベンツ新型Eクラスが発売に!

メルセデス・ベンツ日本株式会社は、同社の中核モデルであるEクラス(セダンとステーションワゴン)を大幅改変した新型を発表し、同日発売しました。(5月14日・パレスホテル東京)


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Eクラスはメルセデス・ベンツの主力的な車種で、リリースによると、世界で1200万台以上販売と発表されています。今回の改変は、基本的にはマイナーチェンジながら、内外装デザインの手直し、新開発パワートレインの搭載、安全装備の進化など、かなり大がかりで、変更箇所は合計で2000カ所以上と発表されています。会場では、上野金太郎社長とマーク・ボデルケ副社長がプレゼンテーションを行ないました。

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まず目につくのは、外観デザインの変更、とくにフロントマスクの変更です。上の写真は、「上」がEクラスの主力モデルで、上野社長が横に立つ「下」がAMGモデル(「E63 AMG S 4MATIC」)です。マイナーチェンジ前は、ヘッドライトが独立の4灯タイプで、グリルもオーソドックスでしたが、ヘッドライトは(片側の)2灯を一体化し、グリルは下位モデル(AクラスやCクラス)や、スポーツ系モデルと同様に、グリル内にスリーポインテッドスターが収まるデザインになりました(E250に装着されるオーソドックスなタイプも存在)。

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新しいフロントマスクは、現行のAクラスとも共通性が感じられる、メルセデスの最新デザインです。従来型Eクラスと比べて、スムースなラインになりました。当日の発表では、ビジネススーツを着こなしながら、スポーツマインドを楽しみたい人にもアピールできるクルマ、というような説明がありました。メルセデスのセダンモデルというと、伝統的に「ビジネスライク」の王道を行く存在ですが、時代の流れの中で現在、メルセデスは思いきったスポーツ的な方向のさじ加減になっているように見えます。最近の日本におけるメルセデスの大胆な広告的展開からも理解できますが、とくにブランドの若返りを重視しているようです。

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「スポーティー」の看板がこの、「E63 AMG S(4MATIC)」です。「AMG Sモデル」は、従来オプション設定だった「AMG パフォーマンスパッケージ」を正規モデル化した流れのものですが、従来のAMGモデルよりも、スポーツ度を高め、また特別性を高めています。「E63 AMG S」の外装は、本物のカーボン製パーツが大胆に各所に使われ、ドイツ発ブランドでは、ライバル同士の攻防も激しいのか、インパクトある外観です。フロントマスクなども大胆な面がまえですが、ただ、ピュアスポーツっぽいというか、爽快さがあるようにも見えます。「E63 AMG S」のV型8気筒5.5リッター直噴ツインターボ・ユニットは、今や585PS/800Nmに達しており、4WD仕様の「E63 AMG S 4MATIC」では、0-100km/h加速が3.6秒で、セダンとして世界最速を謡っています。4MATICは、いわゆるオンロード向け4WDとして新開発されたものですが、EクラスのこのE63では、前後トルク配分がリア寄りの33:67となっています。ちなみに2輪駆動仕様も選択可能です。

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新型Eクラスは、マイナーチェンジ前と比べると、フロントマスク周囲だけでなく、ざっと見たかぎりで、フロントフェンダーやリアドアの外板パネルもプレスラインが新しくなっています。リアドア部分は、従来型ではリアホイールアーチを強調したやや大げさなプレスラインだったのが、前後方向のフィンがすっとひかれたラインになり、素直になった印象です。上の真横から見た比較写真は、下が従来型です。

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新旧Eクラスのフロントマスクを比較してみると、従来型は、シャープな直線が目立つデザインで、ドイツ的というか、少し硬さのある雰囲気でしたが、新型はスムースになりました。従来型のマスクは、2世代前の、丸目4灯式ヘッドライトの名残があったデザインと思われますが、ちょっとある種のロボットじみた、変形の角目4灯式でした。ドイツメーカーは、連続性のあるモデルチェンジをするのが特徴ですが、一時期ラインナップのなかでEクラスだけが丸目4灯式を採用して異色になってしまい、今回ようやくほかのラインと統一感のある顔に戻ったといえそうです。従来型の変則4灯ライトも、次モデル(今回の新型)で2灯式に改変するための布石としての形状だったのかもしれません。ただ、ベンツというのは、昔から、モデルチェンジして旧型になったとたんに、妙に魅力的に見える、というような傾向がちょっとあったように思うのですが、変則4灯式ライトも、今あらためて見ると、いかにもベンツらしい雰囲気を醸し出しているようにも見えます。今回の新型Eクラスは、ある意味ではふつうともいえるくらい、素直なデザインで、最初から受け入れられそうな感じがしますが、いっぽうで、Eクラスともなると、Aクラスとは違って、昔ながらのかっちりしたデザインを好むオーナーもいるかもしれません。その辺は、時代の潮流と、伝統を、どう取り入れるかのさじ加減なのだと思います。ちなみに、上の写真の茶色いクルマのグリルは、日本ではE250のみに採用されるタイプのものです。

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内装も従来型から少し変わっています。上の写真4枚はすべて「E63 AMG S」のものですが、さすがに硬派な演出で、ダッシュボードのパネルのトリム部分は、本物のカーボンが使われています。シートもこれは「E63 AMG S」のものですが、「Sモデル」になっても、内装に関してはあまりスパルタンにならないのは、メルセデスらしいところでしょうか。

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上の写真3枚はAMGでない通常モデルの内装です。上2枚は、新型のもので、一番下が従来型です。新型の印象としては、すっきりして洗練されたようです。目につくのは、ダッシュボードのパネルのトリム部分です。従来型よりも中央のエアアウトレットの枠が少し小さくなり、左右のパネルがつながって一枚の長いパネルになりました。横長のダッシュボードパネルは、最新のメルセデス車で採用されているデザインのようです。このデザイン変更にともなって、メーターナセル内にあった時計が、ダッシュボード中央に移動して、従来はメーターが5個だったのが、シンプルに3個にまとめられています。

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ダッシュボードのパネルのトリムは、ブラックの木目のもの(「ブラックアッシュウッド」)や、比較的プレーンな「ブライトアルミニウム」もありますが、「E300アヴァンギャルド」等で設定される、写真の「ダークアルミニウム」が気になりました。これは、いわゆる樹脂素材の加飾のようですが、加飾技術の進歩というべきか、本物のメタルに模様を施したように見え、メタル調の銀色が渋く、シックに見えました。それとともに目立つのは、メーターナセルから引っ越してきたアナログの時計で、その両脇のダイアル(エアアウトレットの風量調節)も、マッチするデザインです。新たに採用された、この時計とエアアウトレットの意匠は、現行のSクラスなどの、上級モデルと同じものです。


ダッシュボードにアルミ調のパネルを使うのは、最近の傾向のようで、上の写真の「ダークアルミニウム」というトリムは、既発売のCクラス・クーペにも同じ名称のものがありますが、アールデコのごとく模様を付けたのはおそらく新型Eクラスが初のようです。ドイツ的な整然としたデザインでありながら、フランス風とかイタリア風のようなクラシカルな感じも醸し出している、といった感じでしょうか。メルセデスというブランド名は、よく知られるように、1900年代初頭に、オーストリア・ハンガリー帝国の、ニース(フランスのイタリア国境近くの街)総領事だった、イェリネック氏の娘の名前からとられたもので、その名前はスペイン系です。そういった由来からか、メルセデス・ベンツは、ときとしてほかのドイツブランドと一線を画す優美さを発揮することがあるような気がします。

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パワートレインも新しいものが導入されています。E250シリーズに搭載されるのは、2.0リッター直列4気筒BlueDIRECTターボエンジンで、世界初を謡う成層リーンバーンとターボの組み合せに、さらに排ガス再循環装置(EGR)を採用しています。ECOスタートストップ機能(アイドリングストップ)も採用し、従来型よりもパフォーマンス、燃費とも向上させて、最大出力は211PS、最大トルクは350Nm、燃費は15.5km/リッター(JC08モード)となります。このほか「E350 BlueTECアヴァンギャルド」に搭載される、ディーゼルの3.0リッターV型6気筒BlueTECエンジンも、新開発です。また、今回Eクラスとして初めて、ハイブリッドが日本にも導入されました(「E400 HYBRIDアヴァンギャルド」)。上の図はそのシステム構成です。メルセデスのハイブリッドは、2009年にSクラスに初設定され、当時量産ハイブリッド車初となるリチウムイオンバッテリーを採用しました。比較的軽度なモーターアシストではありますが、縦置きエンジンの後輪駆動という駆動系パッケージを活かして、余裕あるエンジンルーム内にそのハイブリッド用小型バッテリーを収容するので、後席付近やトランクルーム内のスペース構成が、通常モデルと変わらないのが特徴です。当面のメルセデス乗用車は、Cクラスより上は、FR(もしくは派生の4WD)堅持のようですから、この方式が適用可能で、Eクラスのハイブリッドも、Sクラスと同じ基本構成です。ただEクラスは、メルセデスとしては第2世代のハイブリッドになるとのことで、進化しており、たとえば最高35km/hまでモーターのみでの走行が可能です。スペックは306PS、370Nm、15.2km/リッターとなります。

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安全装備も、今回進化しています。従来からの「レーダーセーフティパッケージ」が進化し、新たに「ステレオマルチパーパスカメラ(SMPC)」と、後方を照射するマルチモードミリ波レーダーが追加されています。メルセデスでは安全運転支援のシステムを総称して、「インテリジェントドライブ」と名付けていますが、複数のレーダーとカメラによって、車両周囲の状況を監視し、必要に応じて運転動作を支援するというシステムが、高度に進化を続けています。


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この図は、渋滞追従をアシストする「ディストロニック・プラス」ですが、今回ステアリングアシスト機能が追加され、「SMPC」(上記カメラ)を活用してカーブでも先行車両を追従します。このほか、高い速度域での走行時に働く「アクティブレーンキーピングアシスト」は、警告と自動補正ブレーキによって、車線内をキープする走行を導きます。


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(↑BASプラス)
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(↑PRE-SAFEブレーキ)

「SMPC」とレーダーの活用によって、「BAS(ブレーキ・アシスト・システム)プラス」に、飛び出し検知機能が加えられました。「BASプラス」は衝突回避のブレーキ動作をサポートするものですが、カメラとレーダーで衝突の危険を察知すると、まずディスプレイと音などで警告し、さらに万一の場合は「PRE-SAFEブレーキ」が作動します。


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「リアCPA(被害軽減ブレーキ付後方衝突警告システム)」は、後方照射のレーダーが後方からの追突の危険を検知すると、後続車にリアコンビネーションランプの点滅で警告し、さらに自車のブレーキ圧を高めて追突に備え、二次被害を軽減します。


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(↑アダプティブハイビームアシスト・プラス)
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(↑360°カメラシステム)

このほか、他車の妨げにならないようにハイビームの照射範囲を細かく制御する「アダプティブハイビームアシスト・プラス」や、駐車時にステアリング操作とブレーキ制御を行なう「アクティブパーキングアシスト」を全車標準装備し、真上から俯瞰する「360°カメラシステム」を全車にオプション設定しています。カメラは、車体の前後左右の4方向に設置され、4つの映像を合成してモニターに表示します。


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参考ながらこの発表会のあと、5月15日にドイツ本国で発表された新型Sクラスの広報写真です。外観を見るかぎり、オーバーフェンダーが目立った旧型よりもスマートになった印象ですが、スポーティーな風合いを持たせるいっぽうグリルは大型化しているようです。今回の新型Eクラスも、基本はこの新型Sクラスと歩調を合わせる部分が多いかと思われます。


新型Eクラスは6 モデルを加えて合計21モデルが揃います。価格は従来から据え置きで、595万円 (「E250」)〜1817万円(「E63 AMG S 4MATIC ステーションワゴン」)の価格帯になります。「E400 HYBRIDアヴァンギャルド」は890万円です。


(レポート・写真:武田 隆)

リポーターについて

武田 隆(たけだ・たかし)

1966年東京生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科中退。出版社アルバイトなどを経て、自動車を主体にしたフリーライターとして活動。モンテカルロラリーなどの国内外モータースポーツを多く取材し、「自動車アーカイヴ・シリーズ」(二玄社)の「80年代フランス車篇」などの本文執筆も担当した。現在は世界のクルマの文明史、技術史、デザイン史を主要なテーマにしている。著書に『水平対向エンジン車の系譜』 『世界と日本のFF車の歴史』『フォルクスワーゲン ゴルフ そのルーツと変遷』『シトロエンの一世紀 革新性の追求』(いずれもグランプリ出版)がある。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。

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